教育ジャーナリスト中曽根陽子が、さまざまな立場で教育に関わっているオピニオンリーダーにインタビューする探究チャンネル。やりたいことを見つけて、自分らしく生きていくための探究力の育て方について、これからの教育や子育てについて、ゲストをお迎えしていろいろ伺います。
今回は、小中高を同時に教える日本唯一フリーランス教員 日下典子さんをゲストにお迎えした2022年1月28日のVOL.12のお話をリポートします。
フリーランス教員になるまで
日下典子さんは、日本で唯一のフリーランス教員です。現在は、中高一貫校6校、小学校3校で、教壇に立っています。福岡で教師になった時は担任も持っていたのですが、東京の大学院入学を機に、学びと仕事を両立するため、フリーランス教員になりました。
『成功する子はやりたいことを見つけている 子どもの探究力の育て方』を読んで
典子先生は「共感できる箇所に付箋を貼っていったら、全部のページに付けそうな勢いでした。」と付箋がいっぱいついた本を見せて下さいました。そして「この本には、教育心理学会の学会誌で読む論文が何本も入っています。この本をぜひ、多くの保護者や先生方に読んでいただきたい」と嬉しい感想を頂きました。
超変革ノートについて
典子先生が福岡で高校3年生を担任した時、面談で「どうなりたいのか?」を尋ねると「普通に働いて、普通に結婚して・・・」と答える生徒がいました。「どうなりたいのか?」「そのためには何が必要か?」を生徒が見つけるために、典子先生は、超変革ノートを作りました。このノートと他のツールを使って「なりたい私をまず探す」授業を始めたそうです。
のりこマジックとは
「どちらでもよい」です。
学校に行きたくない生徒と典子先生がお話すると、”行きたくない” が、100% "行く” になります。まわりの先生方がその状況を称して「のりこマジック」と呼び始めました。典子先生は「 ”何をやりたいか?”
をその人に決めてほしい。」というスタンスでお話をします。「どうしたいかを決めるのはあなた。私は、どちらでもよい」と伝えるそうです。この部分だけを聞くと、一見、突き放したように感じるかもしれませんが、ポイントは、話す相手と信頼関係があるかどうかです。
また、典子先生は「教えない」がスタンスです。上から目線で何かを教えるのではなく、「色々なパターンを伝えて、どれを選ぶのかは、生徒」というスタンスで授業を行います。典子先生は「私は理科が好きなので、理科が嫌いな生徒に受験科目だからといって、無理に理科を教えることはしたくない」と考え、家庭科教師を選ばれました。家庭科は、受験科目にはなく、生活全般、多岐にわたることが対象なので、授業で色々と工夫をしたい典子先生にはとてもぴったりだそうです。家庭科は、生きるための必須科目という典子先生の言葉が印象に残りました。
命の授業について
典子先生は、阪神淡路大震災を体験して「やりたいことは、全部やりきらないと人生もったいない」と感じました。「明日やろう」がなくなり、「いつ死んでも良い」と武士のような境地になったそうです。典子先生は、高校生を対象に「真剣に生きてほしい、命の大切さを知ってほしい」と、命について考える授業をします。典子先生の震災体験や、自分自身への弔辞について考えるワークを通して、生徒の顔つきが変わり「今日から真剣に生きていこう」と成長するそうです。
自己肯定感をアップさせる授業
典子先生は、命の授業の前後に自己肯定感をあげる授業をします。今、日本で大人も子どもも自己肯定感が低いと指摘されますが、この授業を受けると、生徒の表情が明るくなるそうです。褒め褒めシャワーや、細かいところを見つけて感謝する、そして、言われた方はそれを必ず受け止める、ということを授業で取り組むと、生徒の自己肯定感があがります。「そこに存在するだけでよい」とお互いを受けとめあった生徒さんのエピソードにとても感動しました。
親へのメッセージ
子どもは所有物ではなく、子どもと親は別の物。絶対、子どもは思い通りにならないし、思い通りにしないで欲しいです。課題の分離を意識してほしいです。
先生へのメッセージ
先生同志で情報共有をしてほしいです。生徒の色々な面を共有すると、生徒にそれを伝えられる。そうすると、保護者や生徒が味方になる。先生方、保護者、生徒全員が幸せになります。三方よしを広げましょう。チーム力が大切です。
子どもへのメッセージ
色々な事は、どちらでもよいことが多いです。自分で考えましょう。
そして、お手伝いをしましょう。お手伝いをすることで色々なことを学ぶことができます。
中曽根から一言
典子先生のパワーと優しさが伝わる1時間でした。最後にお話しくださった大人、先生、子どもへのメッセージに、とても深い愛情を感じました。”やりたくない” が ”やりたい” にかわるのりこマジックは、生徒への信頼と愛情が融合したものだと思いました。
次回VOL.13は、2022年3月4日(金)20時から、Go Visions株式会社 代表取締役 小助川将さんをお迎えして「デジタル×多様性」時代の子育てと教育をテーマにお話しします。お楽しみに♪
ご視聴はこちらから。YouTubeマザクエチャンネル
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斎藤美穂 (月曜日, 14 2月 2022 11:11)
中曽根様のマザークエストジャーナル、とても勉強になります。ありがとうございます。この動画の内容も分かりやすくて楽しみながら見させていただきました。とてもエネルギーに満ち溢れた先生ですね。一つ疑問に思ったのですが、この日下先生は大学院に行かれているとのことですが、それは私の母校が開いている社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラムのことでしょうか。このプログラムは高校を卒業していれば誰でも有料で受けられる短期講座で、大学院ではないのですが。
中曽根陽子 (月曜日, 14 2月 2022 16:25)
斉藤様 いつもご覧いただいているとのこと、ありがとうございます。
参考にしていただけたら嬉しいです。
さて、ご質問の件ですが、まず本チャンネルで、典子先生は大学院にいくために上京されたとはおっしゃっていますが、大学院に行っているとはおっしゃっていません。
ご本人にも確認させていただきましたが、目下複数の現場で目の前の生徒たちに向き合いつつ、受験準備中とのことでした
また青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラムを修了されていますが、これは大学院だとは、もちろんご本人も思っていらっしゃいません。
動画をご覧いただければお分かりかと思いますが、
常に目の前の生徒に最良の授業をするために、様々な学びを続ける一方で、ご自身の研鑽にも励まれていて、学会にも所属され大学院の受験準備もされている素晴らしい先生ですので、誤解のないようにお願いします。
今後とも、日下典子先生、並びにマザークエストを応援いただければ幸いです。
斎藤美穂 (火曜日, 15 2月 2022 11:11)
中曽根様、
ご確認ありがとうございました。「東京の大学院入学を機に」と書かれていたので不思議に思っていただけです。お騒がせしました。中曽根様、そして日下先生の益々のご活躍を祈念いたします。
中曽根陽子 (火曜日, 15 2月 2022 12:30)
斎藤さま
ご返信ありがとうございます。
たしかに、ノートの記事の記載が誤解を生む表現になっていました。申し訳ありません。
修正いたしました。